
このページは種明かしを含みます。 誰かに Michaw を仕掛けられる予定の人は、先に遊んでから読んだほうが面白いです。
視線は、本人よりも正直
写真を見せられたとき、人の目は本人が思っているよりずっと速く、ずっとまっすぐ「つい見てしまう場所」へ向かいます。Michaw(見ちゃう)は、その時間を測る遊びです。
カメラの前で写真を眺めてもらうだけで、視線がその場所に入るまでの時間がストップウォッチのように出ます。「彼氏は何秒で見てしまうのか」を、言い訳のきかない数字で確かめられる、というのが一番分かりやすい使い方です。
ただし、このゲームの本当の面白さはタイムそのものではなく、種明かしの瞬間にあります。
遊び方は2つ
目の前の友達に仕掛ける。 写真を選んで、見られたくない(あるいは見てほしい)場所に「目線ゾーン」を置き、端末を渡して「動体視力テストやってみて」と言うだけです。渡された人の画面には、最初から最後まで「動体視力テスト」としか出ません。光る的を目で追うステージが4つ続き、最後のステージとして写真が出ます。結果画面で初めて、自分が何を何秒で見ていたのかを知ります。
離れた友達に URL を送る。 リンクを発行して送ることもできます。リンクは72時間有効で、1つの端末につき1回だけ遊べます。遊ばれたことは送った側に自動で届きますが、タイムは相手が種明かしのあとで「見せる」と決めたときだけ届きます。何を測られていたのかを知ったあとで、本人が決める順番にしてあります。
結果画面では、自分の視線が写真の上をどう通ったのかを軌跡つきでリプレイできます。週間ランキングに名前を載せることもできて、載せた記録は自分で決めた合言葉でいつでも消せます。
正体を隠すだけでは足りなかった
最初は、仕掛けられる側に「顔を固定して、9つの点を順番に見てください」とだけ伝えていました。何のためかは言わない。ネタバレは防げます。でも実際に遊んでもらうと、「これから何かさせられる」という身構えが画面越しにも伝わってきました。身構えた状態で写真を見ると、視線は自然でなくなります。測りたいものそのものが汚れてしまうわけです。
そこで考え方を変えて、空白を隠すのではなく、無害な答えで埋めることにしました。視線の測定に必要な準備(キャリブレーション)を、そのまま「動体視力テスト」というゲームにしてしまったのです。
最初から画面の上に「STAGE 1 / 5」と出しておき、的を追うステージを4つこなしてもらいます。25秒ほど無害なゲームを続けると、警戒はだいたい解けます。そして5つ目のステージとして写真が出ます。ここに「テスト完了!」のような区切りを挟まないのが大事なポイントでした。区切りがあると、人は背もたれに寄りかかって姿勢を崩します。視線の推定は準備したときの頭の位置でしか正しく働かないので、姿勢が崩れると、エラーにはならずに間違ったタイムが黙って出てしまうからです。
最後のステージのバナーを「STAGE 5」ではなく「LAST STAGE」と名乗らせているのも同じ理由です。番号だけだと「そろそろ終わりかな」と気を抜く余地が残りますが、最後だと名指しすれば、そのラウンドを最後まで集中してもらえます。
中身の話
画面は Next.js と React で作り、静的なファイルとして書き出して Cloudflare Workers から配信しています。ランキングや、リンクで送る仕掛けのためのデータは、同じ Worker の上に置いた小さな API から Cloudflare D1(SQLite)へ保存しています。
視線の推定は、すべてブラウザの中
カメラの映像から顔の特徴点を取り出すのには、Google の MediaPipe(Face Landmarker)を使っています。映像も、そこから取り出した顔の点も、端末の外には一切出しません。 サーバーに何かが保存されるのは、ランキングに参加したときと、リンクで仕掛けを送ったときの2つだけで、どちらも仕掛ける人が自分で選んだ写真です。リンクの写真は72時間で自動的に消えます。
黒目の中心は、1点ではなく、黒目の輪郭の4点と中心点の合わせて5点の平均で取っています。これだけでフレームごとのブレが目に見えて減りました。基準にする点は、最初はまぶたにしていましたが、まぶたは視線と一緒に動く(下を見るとまぶたも下がる)ので縦方向の精度が崩れていました。今は頭に対して動かない目頭と目尻を基準にしています。
16点のキャリブレーションと、正直な精度の測り方
「動体視力テスト」の的は16個あり、画面を4×4に区切った位置にランダムな順番で出ます。順番が決まっていると、目は次の的が出る前に先回りして動き始めてしまい、そのぶん測定が汚れるからです。集めた「目の位置」と「画面上の位置」の組から、最小二乗法で両者をつなぐ式を作ります。
その式がどれくらい正しいかは、学習に使った点で測っても意味がありません。使った点をうまく再現できるのは当たり前だからです。Michaw では、16点のうち1点を抜いて式を作り、抜いた点を当てられるかを確かめる、を全点で繰り返す方法(1点抜き交差検証)で精度を測っています。実際の誤差は画面幅のおよそ1割で、特に縦方向が苦手です。目は横に長く縦に狭いので、上下を見たときの黒目の動きが小さいのが原因です。
ちなみに、結果画面の最後に出る「動体視力スコア」は乱数ではありません。この精度から作っています。的をちゃんと追えた人ほど点が高くなるので、偽装とはいえ、測っている中身は「目でどれだけ正確に的を追えたか」で、動体視力という名前からそう遠くはないはずです。
40秒見なかった人には、褒め言葉を
視線が一度もゾーンに入らないまま40秒経つと、計測を打ち切って結果画面に進みます。そのときはタイムの代わりに「あなたは人格者だ」「あなたは賢者だ」といった褒め言葉がランダムに出ます。種明かしのあとだからこそ成立するオチです。
裏でひとつ、確かめたいこと
結果画面では、種明かしのあとに、研究のために記録を使ってよいかを聞いています。同意してくれた人の「性別」「タイム」「どの仕掛けだったか」「キャリブレーションの精度」だけを記録し、写真や映像、個人を特定できる情報は保存しません。
確かめたいのは、「つい見てしまう」は性別に関係なく、ただ“珍しいもの”に向かうだけではないか、という仮説です。鍛え上げた筋肉も、上司の頭も、同じように見てしまうのかもしれない。見なかった人の記録も「40秒見なかった」という大事なデータなので、打ち切りになった回も捨てずに残しています。
名前の話
最初は2026年4月に、視線推定の結果を GIF や動画に書き出すツール「mesen」として公開しました。そこから遊び方を大きく変えて「つい見てしまうまでの時間を測るゲーム」になり、「目線ストップウォッチ」という仮の名前を経て、「Michaw(見ちゃう)」に落ち着きました。途中で数時間だけ「Michow」という綴りにしていましたが、海外の人名と重なって検索で埋もれてしまうので直しています。
インストールもアカウントも要りません。カメラの付いた端末とブラウザがあれば遊べます。画面が大きいほうが安定するので、仕掛けるなら PC か iPad がおすすめです。
Michaw(見ちゃう) を触ってみる
視線推定・アイトラッキングを活用し、画像の中の「つい見てしまう場所」を見てしまうまでの時間を計測するブラウザゲーム・エンタメWebアプリです。




